『天地明察』のレビュー

江戸時代、誤謬が明らかとなって久しい現行の暦に代わる新しい暦法を作り出した人物・渋川春海の偉業を描いた時代小説です。

碁打ちの名家の子弟として将軍家に仕えるという職を生まれながらに持ちながら、そこに満足を見いだせずに天文、数学の分野に情熱を傾け、更には世紀の事業となる国の暦を創設するというすごい才能の人です。

よく考えれば生れも立派、最高レベルの教育を受け、存分に手塩にかけられ育てられた当時の最高レベルの知識人なセレブさん…なのですが(そもそも将軍様の御前で碁を打つことが決定されている人物なのですから当然ですよね。)この小説の主人公たる青年・春海はどこか頼りなく、おっとりとした真面目な性格に描かれていて非常に現代的。読んでいて特に時代の隔たりを感じさせず、すんなり好感・共感を持てるキャラクターになっています。

そんな主人公を配した物語は、モタつき一切なしでどんどん展開、飽きさせる暇もなく二十年以上にも及ぶ艱難辛苦の半生を描いていきます。次々に主人公の心を震わせる才気あふれる先達、仲間、協力者達が現れ、その出会いから様々に学んでは成長していく姿は清々しく、持てる力の全てを注いで命がけで事を成そうと挑み続ける人生には「こうありた」いと思わずにはいられない、真っすぐな情熱に満ちてます。読後感は実に爽やか。

とにかく読みやすさ抜群なので、時代小説はあんまり好きじゃない…という人にも薦められる一作だと思います。